この木は何年目ですか?
このブドウは3年目になります。
4月に芽が出てきて、5月上旬から下旬に伸びてきます。
シャインマスカットだと10月に収穫シーズンになります。
ぶどうの房の甘み旨味というのは、この成長過程によって生まれていくもの?
ぶどうは前年に栄養を蓄えます。冬は根っこが動いていて来年のぶどうの栄養は今吸い取り終わっています。
品質の基本は光合成。葉っぱが出てきて光合成させて、いかに糖分を蓄えるか。
角田には山形や山梨などの産地と比べて梅雨が多く、梅雨の時期に光合成ができずに角田でもやった人は何人かいたが失敗が多かったそうです。
ハウスが環境の助けに?
昔は結局、皆んな失敗してたときは、ハウスじゃなかったんですよ。雨よけという技術がなくて。水分取りすぎて、日も当たらず、実が割れたりしちゃった。
雨よけという形でやれば、シャインマスカットは作りやすい。
1つの品種に対して、収穫初めの初年度にしてどれくらいの収穫が見込めるんですか?
宮城県の方で「1年目からのだいたいの収支計画書というか、こういう試験結果が出てますよ」みたいなのがあるんですけど、3年目はだいたい400房くらい…でもそこからキロだと1本あたり100キロ前後くらい。
就農のきっかけは?もともとやりたいという?
もともとやりたいというよりは、信用金庫の時に、お客さんが若林区で農業をやっている方がいました。若林区はもともと農業が盛んでしたが震災で農業がダメになってしまって。
もともと畑だったところを不動産賃貸にしようとアパート建てている人の地域がたまたま担当になりました。そこで色々話を聞いているうちに、「なんか農業ちょっと面白いな」とそういうのが一気にきて。本当は信金を丸5年やろうと思っていたんだけど、「今だな」と思ってその年に信金を辞めた。3/31までお客さん周りをして、4/1にはここ角田にいるっていう。
今は就農を相談しているっていう状態で、結局トヨタでお手伝いを。
1年間は準備期間で。2年目に入る時に新規就農になります。
ぶどうを選んだ経緯は?
野菜は小学生の時、父親が、自分が生まれる前からここに来てやっていたんで、野菜は見続けていたんですけど。
果実の方が少し良いなというか、高価なもの。野菜と比べたら高価な方を。
もしも将来的に、父親の農業と合体するって考えた時に、果物があると一つのアクセントにもなると思って、将来的に考えると果実がいいなと・・その中でも自分が一番好きなぶどうを。ぶどうは成功している人もいなくて、ライバルもいない。
山元町には少しいるけど、基本的には、山梨とか岡山とか・・宮城県にはぶどうのライバルは少ない。ぶどうと決めてから、ぶどう以外は何にも考えていない。
やっている農家がいるとアドバイスとか貰いやすい環境もありそうですが。
そうですね。逆に言うと今の環境はアドバイスが貰いにくい。だっていないですもん 笑
今後仲間はちょっと増やしていきたいなと思う。
先駆者になりたいですよね、宮城で。
そうですね、宮城と言うか、個人的には角田で。
大学行っても基本皆んな戻ってこないですけど、自分は角田に戻ってくること決めていたので、行く前から。
角田と言ったらロケットですよね。岡山県でロケットぶどうっていうのがあるんですね。
岡山県発祥で瀬戸ジャイアントっていう品種なんですけど。
桃太郎ぶどうっていうのが、実は瀬戸ジャイアントっていう品種と一緒で。
岡山の一部の生産者さんの方で、「これは私達のぶどうです」ってことで桃太郎ぶどうって名前をつけたんです。ロケットぶどうを知った時に一番最初に思ったのは、「ロケットぶどうって言ったら、岡山じゃなくて角田じゃね?」って。ぶどうの形がロケットに似ていて、美味しいんです。難しい実なので、気持ち的には、再来年一応考えています。
拝見すると綺麗に育っている感じですよね。
ここまでは、手間さえ面倒くさいと思わなきゃ、誰でもできるんですよ。ここからですね、技術が必要になるのは。
ブドウ栽培に関しての知識は、やりつつ、色んな人に聞きつつ?
研修とかは岡山に泊まり込みでいって、師匠みたいな人も岡山に。
父が埼玉出身の関係もあって、埼玉の農業組合さんの方にも研修に行かせてもらって。あと、経営っていう面では熊本県の大きなトマト農家さんのところにも10日間くらい泊まり込みで。
父親のやっている経営もあれば、色んな経営を学んで。自分は、ぶどうをやって3年目までは売上0になるので、その間は生活基盤としてミニトマトを栽培しています。経営でいうとミニトマトも控えでいると安心。
ぶどうが収穫時期迎えた時に、野菜系は続けますか?
野菜はミニトマトは単純な作業で育てやすい面もあるのでミニトマトだけに絞ろうと思っています。
大玉トマトは、育てる人によって、同じ苗でも倍くらい収穫量が変わり結構難しい。大玉トマトが作れれば野菜はなんでも作れると言われるくらい難しいんです。
ミニトマトは技術が職人じゃなくても、単純作業で収穫しやすい。だからぶどうとミニトマトで続けていこうかなと。
1年で一番忙しい時期は?
6月の収穫の時期にぶどうは意外と楽なんですよ。取るだけなので。箱詰めも入れるだけなので、比較的時間はかかりませんが、ミニトマトと繁忙期が重なります。房作りという1房40粒に揃えたりなど見た目を綺麗に整える作業も入ってきたりと、6,7月が1番のピークです。
逆に空く時期は?
やっぱり1月とか。ぶどうは肥料とか与えたりはありますけど、剪定も終わって、発芽の時期まで特段やることはない。あと、苗部会に勧誘されて、売る方の苗作りをやろうかなと考えていて、時期的に上手くサイクルできます。4月の下旬~5月上旬に売り終わるので、市場やホームセンターをターゲットに。
ちょうど発芽の時期と被るので、苗を売りさばいた瞬間に、ぶどうが始まるというサイクルが作れる。サイクル的には完璧なので、どんなもんかという試しで今年も苗作りをやろうかなと・・苗作りが経営的に上手くいくのであれば、苗やって、ぶどうやりつつミニトマトをちょこっと。というサイクル。それ以上はなにもやらない予定。
話は変わりますが、これはなんですか?
接ぎ木です。これは、上が大玉トマトで、下が別の品種。トマトはナス科なんですけど、ナス科じゃない植物の「台木」。そうしないと連作障害になっちゃう。
毎年トマトを育てちゃうと、ナス科が好きな細菌だけ土から吸っちゃって、トマトが嫌いな菌だけ土に残っちゃう。そうすると連作障害が発生する。
それを防ぐ為に、ナス科じゃない苗が根っこで吸っている。そうすると連作障害が起きづらいんです。
学生時代、小中学校は結構ハウスに来てたんですか?
こさせられてた(笑)嫌だったていう記憶はありますね。高校生は360日くらいバドミントンの練習だったので、ほぼ来てないですね。大学は神奈川に行ってたので。
学生の時に培われた体力で農業的にも役立ちそうです。
そうですね、精神的にはちょっと合ってるかもしれないですね。
自分はセンス型ではなくコツコツ型努力、頭脳派でもないですけど、自分を理解した上で努力していくっていうか、練習してという感じなので、その面では、唯一そこだけ農業に合っていたかなと。なんでぜんぜん苦にならないというか。
人との繋がりがとても大事だとインタビューをした皆様総じて仰います。
まぁ、繋がりが一番大事だと思う。自分は農業関係者の繋がりというか、友人とか農業とは関係ない人の繋がりから仕事についての話とか、別視線、別の角度からの意見とかがかなり周りの農業してる人たちよりも多い。
農業関係者の繋がりが正直自分まだ薄いので、色んなところを飛び回って参加しているかと言われれば、ぜんぜん参加していません。
農業の情報は父親からの情報がベースです。それ以外の情報は別の角度から情報が入ってくることが多い。売り先とか繋がりがあるなとか、人手不足の時に友人にお願いしたりとか。
植物は成長が止まらないので、「今日人手が!」って時に助けてくれる人はめちゃくちゃいますね。
ただ、農業関係の繋がりも欲しいです。やっぱり一人ではできないので。今の自分には、他の方と違う形での人との繋がりが大事ですね。
小中学校の時、連れてこられた時は収穫作業とか?
収穫作業はさせられた記憶があるが、使い物にはなってなかったですね。遊びにこさせられてたってイメージ。家に置いとくのもなんかなって感じで。
農業始めた時に結構初見でやったことの方が多い?
意外とやったことあるなって。
イメージはなんとなくついてて、「これがこれか!」と昔の記憶が繋がっていった。
新規就農される方に向けてなんですけど、就農する前でもしてからでも大変だったことは?
農地じゃないですかね?父親がいたんで自分は恵まれていたんですけど。農地を借してもらうのは結構大変なのかなと・・
借りるのは若い方だと結構嫌う人が多いと思うんですよ。地権者さんとの関係とか、地権者さんが見てるとか。自分は気にしないですけど、若者であまりよく思う人はいないと思うんですよ。そうすると「農地を買っちゃいたい」とかなるんです。そうすると最初の自己資金が絶対に必要になるんですよね。
そういうの全部考えていくと、お金がないとまず初められないというか。なんで、逆に言うと、農地が簡単に、気軽にあると始めやすいんじゃないですかね。
地権者さんともつながるのが大事なのかなと農業は人と人の繋がりだと感じます。
大事ですね。農業は完全に人と人ですね。
仙台の中では、農業ってできないと思うんですよね。七郷地区ならできますけど、やっぱり、角田にきて農業やるってなったら、角田に引っ越してこなくてはいけないじゃないですか。
角田に住めるかっていう、仙台市民の人が、そういう所も乗り越えられれば、新規就農者っていうのも角田としては増えるかなと個人的には思う。
野菜でも農地借りるっていうのは難しい?
借りるっていうのは意外といけるんじゃないかと。農業委員会を通して借りなくてはいけないんですけど。
機関を通して借りるっていうのを嫌がる人は多いと思いますね。貸すよ貸すよって簡単に言ってくれると思うんですよ。年配の方とか、「寧ろ使ってくれ!」ってなると思うんですけど。そういう人たちでも手続きを絶対踏むの面倒くさいんですよ。「踏まなくていいから勝手に使って」ってなると思う。
でも、新規で就農する人はそういうわけにいかないので、補助金も必要です。そこの手続きが楽になれば・・中々そうはならないと思うんですけど。
確かに契約書の数は多い印象です。
地権者の方は結構ほいほい貸してくれるんですよ。「無人より使ってもらったほうが良い」っていう方。だけど手続きは踏みたくないっていう人が本当に多くて。それがないと、結構始めやすいんじゃないかなと。最初っからハウス建ってるところで、野菜なんかは、そのままスタートできる。
総じて、今からハウスで栽培したいとか、ぶどう育てたいとかっていう、新規就農者に伝えるとしたら何になりますか?
自分は完全に、「まずやってみる」「まず一歩踏み出す」こと。絶対に「大丈夫か?」「お金あるか?」とかその話になると思うけど。その話になると一歩踏み出せなくなる。確実にマイナスな話が初っ端は注ぎ込まれてしまう。自分も色々リスクを削るために、マイナスなことを教えてもらいました。実際いい方向よりもマイナスな話が多い。年配の方も「農作業そんな甘くないよ」と言います。そりゃ甘くないですけど、農業に限らず、個人事業主は根本的に甘くない。ただ、それ言ってしまうと、始まらないので。甘くないのは、当然の話で。
人の繋がりがあれば、助けてもらったりできますし。人の繋がりゼロで始めちゃうと、土づくりに5年とか10年かかって「農業って儲からないよね」ってなっちゃう。
やりたい!と手を挙げたときにスルッと業界に入りやすいのはどれがいいと思いますか?やっぱりどこかに弟子入りするのか・・
弟子入りするのは正直ベスト。いいと思うんですけど、収入がゼロの状態の弟子入りじゃないと結局住み込みはできない。技術もないので、そうせざるを得ないと言われればそうなんですけど・・今の若者が弟子入り簡単にするかというと、どうかなぁと。自分だったら嫌だなと思う。
「農業に全てを懸けます!」というなら、弟子入りして住み込みはいいと思う。ただ、心のどこかで1割2割、「農業ダメだったらなにしようかな?」とか「あれもやってみたい!これもやってみたい!」っていうのがあるなら住み込みの途中で、マンネリ化して、蓄えられる経験値がグーッと少なくなってしまうので、逆に住み込みしないで、研修であちこち行きながら学んだ方がいい気がします。まぁ、技術ないとなにもできないというのはその通りなんですけど・・自分で失敗して、なんとなく「次こうしよう」っていう工夫がある。
パティシエとか料理人とか〇〇職人とかになりたくて弟子入りとか住み込みとかならわかります。そこまで割り切ってないなら、気軽にといったら生意気なんですけど、少し心に余裕が持てる場所をある状態にしておいた方が、気持ち的にいいかなと。弟子入りしちゃうとそれしかないので、逃げ道がなくなる。
多分、50代,60代の方からしたら「農業なめんな」になりますね(笑)
昔の人と今の人は違うので、その時代に合ったやり方じゃないと、やっぱ増えないんじゃないかな・・結果的に増えてないので、やっぱそういうことなんじゃないかなと思います。
農業のやりがいは?
やりがいはめちゃくちゃありますね。自分が満足するまでできる。会社員じゃできないことですね。全部自分で考えてやれる。そういう面ではすごいやりがいがありますね。でも、自分信金魂が個人的にはあると思ってるんで、信金で培ってきたポリシーというか、気持ち一番みたいな。「まず一歩」とはいいましたけど、「やみくも」ではないですね。ちゃんと「計画」はあります。これは信金のおかげですね(笑