三浦幹生さんは、前職は金融公庫の職員でしたが、脱サラし、佐倉地区で角田市では数少ないぶどう栽培にチャレンジしています。現在就農2年目。(令和5年1月24日当時)
就農しようと思ったきっかけは?
前職が信用金庫の職員だったのですが、お客さんの中に農業をされている方がいました。そこで色々お話を聞いているうちに、「なんか農業ちょっと面白そうだな」と、段々思うようになり、「よし、やろう!」と決断したその年に信用金庫を辞めました。
ぶどうを選んだ経緯は?
自分の父親も農家で、トマトをはじめとした野菜を作っています。自分は野菜と比べて単価の高いものにしようと、色々と調べていたのですが、探しているうちに、「どうせ作るなら自分が一番好きな果実にしよう!」と思うようになり、シャインマスカットをはじめとしたぶどうを選びました。
それに、今は父と経営を別にしているのですが、将来的に経営を一つにした時に、野菜だけではなく、果物があると一つのアクセントにもなるとも思いました。また、近隣でぶどうを栽培している方があまりいないことも決め手の一つになりました。
では、就農して2年目ということですが、今はどのような状況ですか?
実は、まだぶどうの収穫をしたことがないんです。
苗木を植えるところからスタートしていますので、収穫できるまでは、生活基盤としてミニトマトなどの野菜をメインに栽培しています。
今年から遂に収穫できる予定で、秋頃に初の収穫を迎えます。3年目で1本あたり200房くらい収穫できるようなので、大体100キロ近く収穫できる計算なので、今から楽しみにしています。
角田ではぶどうを栽培されている方が少ないとのことでしたが、栽培の上で何か工夫していることはありますか?
角田は、山形や山梨などの産地と比べて梅雨が多く、梅雨の時期に光合成が足りず、あまり栽培に向いていません。加えて、今まで雨よけという技術があまり浸透していなかったこともあり、水分の取りすぎと日光不足などから、実が割れてしまうことが多かったみたいです。
だから、自分はハウス栽培という形を取っています。雨よけをすれば、シャインマスカットは比較的作りやすいと思っています。
今まで、農業の経験はありましたか?
自分の父も農業をやっているので、小学生・中学生時代から手伝いをしていました。
昔やっていたイメージがなんとなく残っていて、作業をすると「これがあの時やっていたこれか!」と昔の記憶と繋がっていくことが多いです。
ただ、高校生になってからはバトミントンに打ち込みはじめて、毎日部活もありましたし、大学は神奈川で、やはりバトミントンに集中していたので、その頃は手伝いをほとんどしていませんでした。
そうですか、でも学生時代に培われた体力は役立ちそうですね
そうですね、役立っていると感じます。
自分はセンス型ではなくコツコツ努力型なので、自分を理解した上で努力していくというところは、農業に合っていると思います。だから農作業はぜんぜん苦にならないですね。
他に、どこかで勉強などはされましたか?
自分の場合、岡山に泊まり込みで研修に行きました。だから、師匠と思っている人も岡山にいます。
それと、父が埼玉出身ということもあって、埼玉の方にも研修に行かせてもらいましたし、経営面では熊本県のトマト農家さんのところにも10日間くらい泊まり込みで勉強に行きました。
農業の魅力ややりがいについて教えてもらえますか?
魅力というか、やりがいはめちゃくちゃありますね。自分が満足するまでできる。会社員ではできないことですね。全部自分で考えて行える。それと、個人的には前職の信用金庫で培ってきた「気持ち一番」とか「まず一歩」というような信金魂、ポリシーが生かされていると思っています。もちろん「やみくも」ではなく、ちゃんと「計画」を立てて行動に移す。こういった考えができているのは信金のおかげですね。
今後の予定や抱負をお願いします
個人的には角田で、ぶどうの先駆者になりたいですね。
周りの友人は、大学に行くと基本、角田に戻って来ないのですが、自分は神奈川に行く前から角田に戻ると決めていました。
この角田の地で、自分の力で生活する農業を選んだので、せっかくなので角田から外に発信する立場を目指したいです。
また、ぶどうにはロケットのように面長な形の品種があって、栽培が難しいのですが、「角田のロケットぶどう」として数年後の販売に向けてチャレンジしていきたいと思っています。
では、最後に新規就農を考えている方に向けてアドバイスをいただけますか?
まず、人との繋がりが一番大事だと思います。
今は、友人をはじめ、農業とは関係ない人との繋がりが多いですけど、それでも農家とは別視線、別の角度から意見をもらえるので、参考になることは多いです。それに、人手不足の時には友人達に助けをお願いしています。
ただ、自分には農業者の仲間がもっと必要だと感じています。自分は、農業者になって日が浅いので、農業の情報は父親からの情報がベースになっていますが、もっと色々な人の情報が欲しいし、専門的で作業的な、一人ではできないこともありますから。
だからこそ、人との繋がりが大事だと実感しています。
それともう一つに、自分は「まず一歩踏み出す」ことを第一にやっています。
「これで大丈夫か?」「お金あるのか?」とか、そういった不安はありますが、そこに囚われすぎると、一歩が踏み出せなくなる。自分も色々リスクを避けるために、農業のマイナス面も教えてもらいました。実際、良いことよりもマイナス面の話を聞くことが多いです。年配の方も「農作業そんな甘くないよ」とおっしゃいます。そりゃ甘くはないでしょうけど、農業に限らず、個人事業主は根本的に甘くない。ただ、それを言ってしまうと、始まらないので、そこは当然の話として、キチンと計画し、人の繋がりを大事にしていれば、助けてもらうこともできますから、下手に立ち止まらず「まず一歩踏み出す」を心がけています。
新規就農を目指す方も、悩みと決断の連続だとは思いますが、キチンと計画し、あとは「まず一歩踏み出す」ことを恐れずに、やっていってもらいたいと思っています。