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重川さん

親から継いだ土地、会社も経営


重川さん

就農されてどれくらい?

今年で8年目。以前は東京の建築会社に。 東北工業大学大学院卒です。

こちらに戻ってくるキッカケは?

家を継ぐ人がいなくなって。私は次男なんですけど、長男が嫌がったので。 うちもそれなりの面積をやっている農家なんで、地域の事を考えた時にやらないとまずいかな、と。

使命感というか必要に駆られて戻ってきました、という感じなんですね。

そうですね、あと、お金もそれなりに稼げるかなと思ったんですけど。
4人兄弟で私は大学院まで行かせてもらって。兄と妹も東京で。
「あれ?もしかしてこれけっこう稼げるんじゃ?」と思って。
実際はそうでもなかった。全然違った、そこは誤算でした(笑)

実際戻ってきてやってみてどうでした?苦楽色々あったと思います。


いい所で言えば、自然の中で仕事できるっていうのはいいなと思います。景色とか綺麗だなーとか。
あとうち、販売まで結構力入れている農家なので、そういう所までこう自分の、最初の栽培から販売までできるっていうのはやりごたえがあるというか、面白いなって思っています。

悪い所で言うと、責任感というか、自分次第な所が多いので農作物の管理が大変。まあ質もですし売り先もの確保もですね。そこの責任感というか、まあそこが面白さに繋がっている所でもあるんですけど。

手入れの具合によってそれが素直に反映される?

そうですね、やればやるだけ良くなるって訳でもないんですけど、逆にサボればそれなりの出来栄えになっちゃうので、やるときにはやって。去年でいうと3月から6月ぐらいまでは休みが無いぐらいで、逆に冬の時期は、私は1月なんかは殆ど仕事してない状況ではあるのでそういうメリハリがあって私は、いいかなと思いますね。やる時にはガっと集中して休む時は休んで。大変っていう所は、大変っちゃ大変なんでね、朝から晩まで休みなく。

販路開拓するのに大変な事とか、普通の米農家さんとの違いとかの話を。

販路に関してはうちの先代が元々自分で作った米を早い内から販路を築きました。私も去年から代表になり東京の商談会とか行って地域開拓をしていて、やりがいはかなりあります。県外で他のものと強制的に比べられる、そこで自分のいい点だったり悪い点だったりを改められるので、そこでもモチベーションありますし、もっと、より良いもの作っていかないとダメだなって思います。
売るためにはどういうものを作ったらいいか常日頃考えています。

販売は本当に大変ですね。

米の価格ってだいたいは農協の価格がベースにはなっていると思うんですけど、そこにプラスして自分たちの利益をどれだけ取れるか。自由になるためにはいくら以上で売らなきゃいけないとか。そこの交渉、お金の所は大変だなと思っています。
昔、20年前ぐらいだと米農家って何をしていても楽に過ごせるぐらい米が高かったんです。今はかなり経営を考えていかないと中々厳しい所だと思いますね。

それは売価が下がっている?

そうですね、一般的な販売価格がそもそもかなり下がってきています。
今までの農家って、販売とか、栽培、経営やお金の管理にしても、雑にやっていても楽に生活できたんですけど、今は本当に逆で、ちゃんと利益を出すために長期的にも短期的にも数字で捉えて、そこから生産物に対する栽培の目標を立ててそこの目標をどうやってクリアするか色々考えながらやっていかないと、中々農業で生活するっていうのは厳しい時代になってきています。

お米で新規就農を考えた時にどう思いますか?

米は栽培する面積が他の農作物に比べて大きいので、畜産や園芸野菜に比べると、それなりの農地を確保しないといけない。まず地権者の理解が一番のハードルです。さっき言った通り、あんまり米を売って利益が取れなくなってきています。それなりに量をやらないと売り上げが計画できないので、必要な面積の田んぼ、農地を揃えるのはかなり障害になってくるかと。

あと初期投資。機械を揃えるって所の投資がおそらく他の作物と比べて全然桁が違う。例えば、コンバインってあるじゃないですか、あれ一台1200万円ぐらい。1000万円は軽く超えてくる。コンバイン一つだけで。
他にもトラクターとか米を乾燥調整するのとか、っていう機械代がとてつもなくかかる。もし米で新規就農したい場合は、今は法人化が主流です。

今、法人もかなり増えてきているので、そういう所に就職して、まず栽培の基本的な技術とか、そこでちゃんと教えてもらう。勉強しながら色々やっていくのがいいと思います。そっちの方がその土地にも馴染めますし、その法人の雇用主が理解のある人だったら、将来的に農地を分けてもらえる可能性も無きにしも非ず。
一から新規就農するって、米じゃなくても、組織的にも技術的にも乏しいと思うので、どこかで修行や就職するっていうのはかなりいいなって思います。農業も何の職業と一緒かな。

今は国からの支援もあって新規就農の支援とかもありますし、角田市でいうと市役所もかなり熱心でいてくれるので、やりやすい環境ではあると思います。

角田市で農業をやるうえで、魅力を感じる所は?


米の話だと土地がいいですね。阿武隈川があって、阿武隈川から形成される肥沃的な大地といいますか(笑)
土がいい所が多いので、かなり美味しい米も実際とれますし、平地ですしね。いい環境かなとは思います。

人的な所でいうと、結構教えてくれる人が多く面倒見がいい人が多い。この辺の田んぼを周っていたりすると色々アドバイスくれる先輩とかもいます。そういう人が周りにいるとこっちも色々聞きやすい。私も非常に勉強になっていて分からない事があったら聞くようにしています。農業に関しての知識が豊富にある。

制度的にいうと、私は正直雇用に関しての制度って利用できなかった。親元就農なので。でもさっきも言いましたけど市役所、市役所の職員の話聞くと非常に熱心なので。職員さんからしたら当たり前の事やってる感覚かもしれないけど、それができる職員は意外いないので。

公社もちゃんとありますし、農業に対する感覚はちゃんと取れてるかなと思います。
利用できる制度があったら、ちゃんと教えてくれる。

農業するにあたって人との繋がりが大事だと思いますが、全く知り合いがいない土地で新規就農することについてどう思うか

知り合いがいるに越したことはないけど。そもそもやりたい作物がその土地に合っているかっていうのが重要なポイントだと思うので、周りに同じ作物をやっている人がいるか確認するのは農地を選ぶポイントとしてはかなり大きいと思います。それぐらいは下調べしていた方がいい。
例えば農産品作りたいと言って周りに同じ品種やってる人が誰もいなければ、品種に合わない土地かもしれない。逆にやってる人がいるって事はそこで栽培できる可能性があるし、聞くこともできる。知り合い以前に、作物がそこで育つかが重要。
たまに社会に疲れたとか自分探しみたいな人がやってくる事もあるけど、人と関わりたくないとか、田舎暮らしに憧れて、とかそういう人は絶対無理です。農業なんて自分で全部やらないといけないのでなおさら人と関わる機会が出てきます。農業って天候とか外的要因に依存するので、自分じゃ100%頑張ってもどうしようもない事とかあるので、強い精神力が必要。市場価格にも左右されちゃう。

農業って他の産業に比べてもハードルが高いのでしょうか。

本当、昔よりもマルチにやっていかないと。
ただ栽培だけをしてればいいっていう時代ではなくなってきているので、そういう意味ではできる人っていうのは限られてきているのかなって思います。
そんな時代の中でもマルチにちゃんと計画をして、しっかり利益あげている人達はちゃんといます。始める前にしっかり考えて、やりながらもちゃんと考えて、農業って例えば車の工場と違って回転が速くない。
だからこそ中長期的にちゃんと長い目で見て、っていう事は必要だと思う。

うちも本当に米でいいのか、麦大豆などの作物をもっと幅広く展開した方がいいんじゃないかといった話もありますし農政的に補助が手厚い作物もあります。
他にも色んな方法で農政に合わせて利益をあげてるって人もいますし、うちみたいに米で頑張って、米の付加価値というか、ちゃんと良いものを作って、ちゃんとした評価をもらって、それをお金に換えるっていう方法もありますし。「自由なんだ農業!」っていうのが一番の魅力だと思うので。
自由に自分の決めた枠組みの中で、ちゃんとどれだけ責任を持ってできるかってのが重要。

将来の目標みたいなのはあったりしますか?


個人的な目標は、日本全体の米の需要を上げるっていうのを目標にしています。
まず、一番はお客さんの満足。そこは日々、毎年繰り返し試行錯誤して色々実験を繰り返しながら米の品質を高めて安定的にちゃんと経営できる作物をしっかり作る事っていうのはまずは第一で。そこから色々商品開発をしていきたい。
まず良いものを作って、消費者に対して「お米ってすごいおいしいんだ」って思ってもらう事によってお米全体の関心を少しでも上げれたらいいなあと思っています。

商品開発というと6次産業の所まで??

そうそう。
どういった土地でも共働き世帯が多くて自炊で米を食べるという機会がそもそもハードルが高いものになってきています。米を研いで炊いて・・とかっていうのは正直手間じゃないですか。
例えば最近で言うと、麺にしたりとか、米粉とか。でも最終的にはお米でちゃんとご飯食べて欲しい。基本は良い米を生産して販売する過程を大事にしたい。加工品で利益出そうとすればできるんでしょうけど色々大変で。利益を担保するには価格もそれなりにしっかりした価格にしなければならないけど、6次化する以前に大前提である”お米を普及させたい”っていう目標との折り合いをどうしようか考えている。

最終目標は?

そうそう。
最終的にはコンビニおにぎりが1つでも多く売れればいいって考えなんですよ。別にコンビニにお米を卸しているわけじゃないですけど。コンビニおにぎりだったり牛丼1杯でも売れればいいと、そういう活動をしている。
なので、まあ、やるからにはちゃんとそこで利益でるような構造にはしたいと思うんですけど。ねー…

経営って難しいですね。

そうそうそう。でも、最初は趣味半分遊び半分でもとりあえずやればいいのかなって考えです。

最後に新規就農の方にメッセージを

何の仕事をするにも志や目標がないと続かないのと一緒で、農業やりたいっていう強い気持ちがある方だったらいいですね。周りもそういう人に刺激されてモチベーション維持になりますし。
個人的にそういう新しい人と関わりたくて、ちょっかいかけます(笑)
農業、確かに大変な事はありますけど、それ以上にやっぱり良い事もある。

自然の中でできる仕事って…

一次産業ぐらいじゃないかな。農業、林業、漁業ぐらいでしょ。自然を相手に、自然をコントロールして自然を作っているというか。社会的意義とか、職業に関しても社会的意味合いっていうのもあるので大きい仕事だと思っています。その点もやりがいです。



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