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 只野 実さん

脱サラし先代である父から事業継承
研究会で積極的に情報共有

●只野さんの説明

 只野実さんは枝野地区の水稲農家。脱サラし先代である父から事業継承して面積26haの田んぼで米の栽培を行っています。現在就農3年目になります。(令和4年12月21日現在)



只野さん

就農された経緯を教えてください

実家は昔から農家で米作りをしていましたが、私は農家を引き継がず会社員として働いていました。
 中学生の頃から手伝っていましたが、友人達がバイクで走っている姿を横目に稲刈りを手伝っていたため、正直手伝うのは嫌だなと思う時期があったことを覚えています。ですが、成人してからは農業機械に乗ることが楽しかったこともあり、稲刈りや田植えの時期は仕事が休みの日には必ず手伝いに行っていました。時期になると、「もうすぐ稲刈りだ!」という気持ちになり、就農前は営業職だったということもあって、その土日の農作業がストレス解消になっていました。
 そんな中、父の病気が発症し、仕事を退職して父の看病をしながら、2年の間、田植えや稲刈りなどを一通り経験したことが就農したきっかけです。
 その2年間は手伝いという形で農作業をしていましたが、父が亡くなったのち経営を引き継ぎ農家になりました。

実際に就農してみての感想をお聞かせください

就農一年目は、こんなに手間をかけないといけないのかと感じていました。
 今考えてみると、手伝っていた頃は気持ちも完全にお手伝いさんだったので、田んぼのことは分かっていなかったですね。「どこを刈ればいいですか?」と聞いて「そこを刈ってくれ」というように指示通りにだけ手伝っていました。お米は八十八の手間暇をかけてできると言いますが、手伝っている当時からその言葉の意味を自分なりに実感していたつもりでした。ただ、初めて自分自身で1年間通しての米作りを経験した時に、当時八十八と思っていたことは、ほんの2つか3つの手間で、本来はこんなにやらなければならないことがあったのか、ということに気づかされました。
 稲刈りが終わったら全て終了ではなく、刈り取った直後から既に来年に向けてスタートしますし。

田植えや稲刈り以外の時期も手間がかかるのですね

そうですね。就農当初は、子供達に「実家の枝野で働くようになるから、毎日一緒にご飯食べて、11月あたりからはずっと家にいるかもしれない」という風に話すくらい冬場は仕事があまりないと思っていました。ですが、実際はそんなことはなく、秋の稲刈りが終了しても仕事に励んでいます。
 おそらく私は仕事が非常に好きなのですね。自由に動けるはずなのに、手が空くと結局自分で次の仕事を探してしまう。段取り、スケジュールひとつで何とでも時間を作れるはずなのですが、いつも違う仕事を見つけてしまいます。

そこまで熱中してしまう「農業のやりがい」とは、どんなことでしょうか


自分で気づいた事、感じたことを自由に反映できることに、とてもやりがいを感じます。例えば、この除草剤を使用するとほ場が荒れなかったとか、田植えの時にこれを使うと収量が上がる、下がるといったことをデータに残すことで、変化に対する因果関係を見つけることができます。
 そうすることで次に活かせますし、その発見が楽しさに繋がります。そういった自由な裁量、試行錯誤がやりがいになっていますね。
 毎年、天候は変わりますし、ほ場状況によっては同じ肥料を与えても結果が全く違ったものになることもあります。そういった不確定要素に左右される部分はとても難しいです。
 ただ、その難しさがあるからこそ新しい施策を発見できた時は非常に面白いです。

農業をする上で大切にしていることはありますか

地域の方々との繋がりを大切にしています。
ありがたいことに、私は近隣の米農家さんたちと仲良くさせていただいています。そのおかげで情報共有できる関係が築けています。
 稲作の成果は1年に1回しか出ません。回数で言えば30年お米を作っても、30回です。それだけお米は経験を積むのに時間がかかりますが、複数人でそれぞれの経験を共有すれば、知識が2倍、3倍となります。
 実際に「枝野農業研究会」というチームがあり、そこで様々な情報と経験を共有しています。そういった仲間と一緒に米作りができているので、私はとても恵まれていますし、これからも大切にしていきたいです。

これから農業を始める方へアドバイスをお願いします

私が言えることは、やったらやった分だけ自分に返ってくるということですね。特に苦労は嘘をつかないと本当にそう思います。実際に就農して頑張った分は自分に返ってくると、日々実感しています。
 また、農業はダサい、大変そうだ、といったあまりいいイメージが無いかもしれませんが、県外の農家さんに目を向けてみると、山形には「スーツ農家」という面白い取り組みをしている農家さんもいらっしゃいます。
 私が目指しているのも「かっこいい」と憧れてもらえるような農家の姿です。
 例えば「スニーカーでできるような農業」とかですね。稲刈りなんかも水管理をしっかりと行い、冬場に水持ちを良くしておけば、余計に田んぼに入らなくても、スニーカーでサッとできる。そういった創意工夫ができ、頑張った分だけ見返りがあるというのは夢がある仕事だと思うのでぜひチャレンジしてみてほしいですね。
 加えて、地域の方々との繋がりも大切にしていただければと思います。
 例えば、田んぼに水を張る作業では、当然蛇口をひねったら水が出るわけではなく用水路と田んぼを繋げる水路のゲートを開けて初めて田んぼに水を張ることができます。水路は公共物ですので、それぞれの田んぼに行き渡るようにしなければならないので、近隣の農家さんとの意思疎通は必要不可欠です。ありがたいことに私は助け合い、協力し合える関係性を築けているので大きな問題にならずに作業できます。そういった繋がりが土台にあって作物を育てていくことができると思っています。
 知識や技術、熱意など大切なことは沢山ありますが、農業を始めたいと考えている方には、ぜひ繋がりを大切にしていただければと思います。
 農業に参入すれば、それだけで地域の方々に喜ばれますし、私たちも新たに農業をする方が枝野に来て頂けたら大歓迎です。




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