新規就農で入りたかったんですよ、他の町で地域おこし協力隊を2年半やっていたから、もうそろそろ新規就農だと思ってここだと思う地域を探したんです。
※地域おこし協力隊・・過疎や高齢化の進行が著しい地方において、地域外の人材を積極的に受け入れ、地域協力活動を行う制度。
角田の地を決めたきっかけは?
地域おこし協力隊に参加して残り3年の任期があると思った時にグーグルストリートビューで耕作放棄地の2014年の状態を見て、今から畑の手入れを始めて協力隊の期間が終了する頃にはちょうどいい状態まで持っていけると確信しました。
今ある木はダメでも土地が平坦。今まで色々と学んできたので、自分のできる範囲でできそうだと思ったこともきっかけのひとつです。
地域おこし協力隊から就農に移行準備をする方はあまり例がないようですが、梨農家を目指している人に向けてアドバイスを。
1年に1回しかできないんですよね、選定も誘因も収穫とかも。
80歳の方も収穫は50回くらいしかできない計算です。だから最低でも修行は2年くらいは通してやらないと選定から収穫までの流れは把握が難しい。1回切ってみてどう生えてくるのか試してみて、次またやってみて・・。
農業をやっている方の側について流れを伝授頂き、自分の畑持って実践してみて、次こう切ってみようとか。
経験がものをいう感じですね
あとは協力隊の方が町に溶け込みやすいような気がしています。新規就農よりも協力隊の方が手厚いので、農業する心の余裕みたいなのも生まれます。地域の溶け込みやすさっていうのもやっぱりいいなあという所ですね。
やっぱり周りの協力ってかなり助かりますか?
そうですね、今回、機材も近隣の方から借りたんですよ。それは耕作放棄地で農業を開始したからとも思っています。
草刈りするだけでも所有されていた方は嬉しく感じていただけると思いますし、耕作放棄地を直せばもっと嬉しく思ってくださるのではと感じています。それで貸してもらえたのかなと思ったんです。だから新規就農よりも協力隊で入った方が溶け込みやすさもあって、僕的にはおすすめ。
梨栽培はもとより暮らしやすさもやっぱり大事な要点のひとつなので。
色んな人に助けてもらわないとやっぱり暮らしていけないですし。
※耕作放棄地…「もう利用されていないが、過去に作物が育てられていた土地」のこと
新規就農だと最初の数年は生産技術も発展途中だと思います。収入の安定が難しい中で資金面で保障されているところも結構大きいですよね。
(はじめの数年は生産技術が)間に合わないのかなーと思っちゃいます。
保証制度は準備型が2年で、経営開始型が3年。
やりながら覚えるっていうのって、結構カツカツの状態になってくると”もういいや”みたいな感じになっちゃうと思うんですよ。ちゃんとした人について、ちゃんとして色々と町に貢献してやっていくには新規就農では資金が足りないと思います。
今、色々教わったりする方はいますか?
います。角田の梨農家さんって10人弱いるのですが、人それぞれ技術に個性があって、今の僕の技術と色んなものをミックスして、売るための規格がどんなものか、薬剤散布も販売の規格に合わせた減農薬でやるなど、色んな方から教えてもらいました。一番教わったのは収穫の規格です。正しい規格でスーパーに持っていくには、そういうのはやっぱちゃんとしっかりしないと。一番はそこだと思います。
生協っていう大きい販路があるっていう所も、新規就農する理由と規格さえ揃えれば安心して取り組めそうです。
そうですね。まずは生協出荷からスタートして、いずれはでも直売所もやるつもりです。角田は高齢化進んでいるので、いずれはちゃんと回転してきたら、ここの畑だけではなく規模拡大しながら直売所を一から建てられたらなとは思っています。
どこの産地も高齢化が進んでいるので産業面積を集約しながら規模拡大していって、それこそ新規就農の勉強できる所を作って卒業したら協力隊の受け入れ団体とかに(笑)。そういうのをやれたらなーとかもちょっと思っています。
コミュニティーや体験は大事ですね。そういう場所が出来るのは楽しみです。
なかなか大規模に高齢化進んでくると、教える余裕がなくなってくると思います。僕まだ若いですが、体力なくなってきて、だんだんとレクチャーする気力も薄れそうだと感じています。近隣の方々が現役の内に学んで、次世代へ教えられるような場が提供できればとも思います。
ゆくゆくはコミュニティを提供する側にも?
そうですね、いずれはと考えています。
今ある木が育てばもうちょっと稼げるようになり、順々に農園の整備をしていく様子を見るのも新規就農する方には新鮮なのかなと思います。
農業を生活の基盤にしようと思ったきっかけは?
以前よりライフワークで趣味の作品を制作しています。それを続けるには、東京でサラリーマンをしていると時間が無くて全然できなかったんですね。どうしたら可能になるかなと思ったときに、地元近くで農業をしていれば地元の人が助けてくれて、趣味の時間もとれて作品も作れるかもと思ったんです。
果樹を選んだのも、果樹園だと来客が増えそうだし趣味の時間もとれると思ったことがきっかけです。
集客を加味したうえで果樹を選んだ、と。
そうですね。果樹の収穫体験などで色んな人が来る、だろうと思って。 僕が目指した理由は、趣味との両立が叶う職業と捉えて農業を選択しました。 たまたま見つけたのが梨農園。以前は畑の適正規模とか、全然分からずやっていました。色々勉強していくうえで、あれ、なんかもうちょっと違った産地の方が効率いいぞ。と思って、それで角田に。色々と産地を見てきましたが、角田は他と全然違います。集約されているのがすごく良くて。
直近の目標は収穫。それ以外に何か見込んでいることはありますか?
キャンプ場の造成。これは本当に最終着地点で。
果樹園のキャンプ場って、もしかしたら無料で貸してあげられますし、いいなと思って。
キャンプ場は最終的な目標ですが、まず畑の復旧大前提で。次に倉庫。倉庫とか直売所を作る。3番目が農地拡大、4番目にキャンプ場造成。でもまだまだ復旧が進んでないのでこれからです。
今後不安に思っている事は?
ここは全ての問題を解決できる場所だなと僕思っていて。10市町村候補あった中から決めたので土地に迷いはありません。
農業の面でいうと、担い手が少ないんです。一人辞めると一気にドーンと空いちゃうので、かなりの面積が耕作放棄地になっちゃう。そこから果樹の病気も飛んじゃって周りの元気な果樹に対しても影響でます。いいタイミングで担い手を入れるためには元々勉強している方が最適だと考えています。
おそらく貸す側も何もわかんない人より、”この子は技術学んできたから貸しても大丈夫”と思える方の方が安心だと思います。
何十年と育ててきた、自分の子供、自分の作品みたいなものですから。
ここにある果樹は30年ぐらい。結構お金かかってるんですよ。ここの山を造成するのに億単位の金かけて、一部負担で個人の方が管理しているのですが、それなりの資金をかけてるので安易に渡したくないですよね。自分の家と同じようなもんです。でも産地としては守らなくちゃいけなくて。
所有者と担い手のマッチングが難しい。技術の勉強はやっぱり年数が長い方が絶対にいい。協力隊を活用して新規就農のレールに乗っかった方が溶け込みやすくなるし、細かなと所まで学べますしいいなと思います。
最後にひと言お願いします。
僕は、技術を学ぶ期間は長い方がいいと思っています。きちんと学べば稼げるようになると思っているので、就農する前にきちんと勉強したうえで経営に向かっていくのが一番いいと思います。
農業って、学んでやって失敗してが、1年単位・1か月単位だと失敗をリカバリするのに期間が長くかかる大きいサイクルなんですね。
そう。木は1本1本硬さも違いますし生える角度も違いますし、それは数をこなさないと分らない事。木の状態も全部違いますしね。やっぱり、なんとなく行っただけでは中々吸収できない事もあるので、就農前に色々な経験を積んでもらえたらなと思います。